プラネタリーヘルス学環について

プラネタリーヘルス学環とは

プラネタリーヘルスとは、20世紀以後の人口爆発やグローバルな経済活動による自然破壊などにより、温暖化や異常気象等の変化が生じ、 生態系の恒常性が破壊され、人間の健康と社会の存続が脅かされていることに警鐘を鳴らす新たな概念です。
今起こっているあるいは将来起こるであろう新興感染症、気候変動、生態系破壊など人間の健康と社会に影響を及ぼす問題の解決には、 その一つ一つに対して具体的なアクションプランの提案が求められています。そして、そのためには地球生態系レベルでの理解とアプローチが必要となります。

プラネタリーヘルス学環は、この地球規模の課題に社会学、経済学、工学、環境学、医学、データサイエンスなどのそれぞれの専門家が学問領域を超えて取り組み、俯瞰力と実行力を備えた実務家リーダーを養成する全学的組織です。

長崎大学長挨拶

長崎大学は、未知の感染症との闘いにおいて、古くから日本の感染症対策の最前線に立ち続けてきました。離島固有の風土病はもちろん、江戸時代、長崎が海外に開かれた唯一の窓口だったことから、海外から持ち込まれる感染症の対応にも迫られました。それ以来続く長い経験の蓄積が、熱帯医学研究所や感染症研究出島特区をはじめとする長崎大学の感染症研究のフィールドを世界に広げ、いわば必然的に他大学に先駆けて「グローバルへルス」を理念に掲げる大学となりました。
2008年には国際健康開発研究科を、2015年には医歯薬学総合研究科 熱帯医学専攻と国際健康開発研究科を統合して、熱帯医学・グローバルヘルス研究科を設置し、さらにロンドン大学とのジョイントディグリー専攻による卓越大学院プログラムの採択など、グローバルヘルス領域で国際的に活躍できる人材を養成してきました。
しかし、グローバルヘルスの実現を深く追求する中で、地球上に発生する諸課題の解決には、環境問題や経済格差などが複雑に絡んでおり、医学・保健衛生上の視点だけではなく、より多面的な視点が必要ではないかと考えました。

こうした背景から、本学は、2020年1月に「グローバルヘルス」をさらに発展させ「プラネタリーヘルス」への挑戦を宣言しました。
プラネタリーヘルスとは私たち人間の健康も含めた「地球の健康」を支え続けるために有効な「答え(解決策)」を探求し、私たち自身の意識変容、行動変容を促す取組みのことだと考えています。その探求は、地球や地球上の生態系との関係を踏まえて社会のあるべき最適な姿を模索することであり、「科学の視点」と、「市民・企業・行政などの多様な視点」を重ねて行われることが必要不可欠です。
このプラネタリーヘルスの実現に向けて、このたび、社会学、経済学、工学、環境学、医学、データサイエンスなどのそれぞれの専門家が学問領域を超えて取り組む全学的組織として、「プラネタリーヘルス学環」を設置しました。 この学環では、まず、「Doctor of Public Healthプログラム」を開始し、プラネタリーヘルスの中核となる地球規模での公衆衛生の問題に関して、「科学」、「政策」、「実践」を橋渡しできる俯瞰力と実行力を備えた実務家リーダーをめざすプロフェッショナル人材を養成していきます。

永安 武
長崎大学長

永安 武

プラネタリーヘルス学環長挨拶

プラネタリーヘルス(Planetary Health)という言葉は直訳すれば「地球の健康」です。ここでいう「地球」には地球そのものとともにその上に乗った生態系や、さらにその一員としての人間、人間の作る社会、全てが含まれます。これらがお互いに良い関係を保ち、全てが持続していける状態が、プラネタリーヘルスが実現した状態であることになります。今我々が直面している課題であるパンデミック、戦争、難民、環境汚染、貧困、気候変動、生物多様性減少、などは、いずれも「地球の健康」の問題として理解して初めて、持続的な解決策が見出せるでしょう。 長崎大学は2020年初頭に、多分野の知を繋げてプラネタリーヘルスの実現を目指すことを表明し、全学的に様々な取り組みに着手してきました。世界でも欧米を中心にプラネタリーヘルスの実現を目指す研究機関や機関連携が増えつつあります。一方で長崎大学には、 80年におよぶ長い熱帯医学研究の歴史と、そこから立ち上がったグローバル・ヘルスの教育研究実績があります。

このような流れの中で、学環は大学院研究科の新たな発展形として産み出されました。その心は学際性です。プラネタリーヘルス学環では、多様な研究科と連携して「地球の健康」が抱える課題に挑みます。そして今年開講する「ドクターオブパブリックヘルス」コースがそのトップバッターとなります。

このコースでは、学際連携から産み出される新たな科学的知見を、どのようにしたら現実の社会で人間の健康に役立てていけるのかを考え、その考えを実践できる国際的な人材を養成します。そのためにユニークな講義科目だけでなく、行政機関や企業・地域コミュニティなど様々な「現場」での経験を通して実践スキルを身につけてもらいます。

既に述べた通り、プラネタリーヘルスという言葉はまだ10歳に満たず、地球の健康が抱える課題の解決には未開拓の領域での果敢な知的創造が必要です。そのようなチャレンジに飛び込んで行くhotな(coolな)人とともに持続的な「地球の健康」を実現するのが私たちの願いです。

プラネタリーヘルス学環では、今後、さらなる視点に基づく次の学位プログラムの開設についても検討を進めています。

渡辺 知保
プラネタリーヘルス学環長

渡辺 知保

SDGsの一歩先へ プラネタリーヘルスとは何か

設置の目的・必要性

社会的背景からの必要性

差し迫る地球規模の課題の解決においては、政策過程に関わる実務家に対し、非常に高い専門性とあらゆることを俯瞰的に理解できる高度な能力が求められるようになってきています。たとえば、新型コロナウイルスパンデミックや福島第一原子力発電所事故は、科学的エビデンスや専門的な考えに基づき最適な政策を速やかに立案し実施することが困難であることを露呈しました。科学的エビデンスに基づいた政策を推し進めるには、データに基いて有効性を予測、評価するといった科学的アプローチや、それらを人々へ説明する能力が求められます。最近では、新たな情報テクノロジーに対する知見とその活用能力も求められています。さらに、既存の社会制度や法律、経済活動、人権など、ときに対立する利害や異なる価値観を調整しなければ、科学的に正しい政策の実施は不可能です。

設置の趣旨

長崎大学には、熱帯感染症をはじめ、地球規模の課題解決に取り組んできた長い伝統と卓越した実績があります。こうした教育・研究基盤を持つ長崎大学が、世界的な喫緊の課題の解決に向け、博士レベルの高度実務専門家(科学と実践を橋渡しする人材)を育成します

設置の趣旨と社会的必要性がマッチ

長崎大学では、新たにプラネタリーヘルスへの貢献を大学の目標として掲げ、学問領域を超えて地球規模の課題の解決に全学的に取り組んでいます。本学環では、科学的エビデンスを政策に結びつけ、政策立案、政策決定、政策実行に貢献できる実務家リーダーを養成する博士レベルの高度実務専門家育成課程を創設します。

学環の構成

連係課程構成組織

熱帯医学、国際保健を基礎とした“グローバルヘルス”を教育・研究の中核分野とするが、対応する課題は地球規模課題となるため、人文社会系及び理工学系の力を糾合して学環を構成。

協力部局

長い伝統と世界レベルの実績を持つ熱帯医学研究所を中心として、多様な分野の学内組織からの支援体制。

連携機関

ロンドン大学(ジョイントディグリー専攻)NCGM及びNIID(共に連携大学院)卓越大学院プログラム(東大、北大、帯広大、シスメックス)及び連携協定等(JICA、環境研)等により強固な連携を構築している国内外の世界レベルのパブリックヘルス教育・研究機関等からの支援体制。

広報物の紹介

長崎大学大学院プラネタリーヘルス学環

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